建設機械のすべて クローラクレーン組み立て

三栄書房発行『建設機械のすべて』より転載

超大型・クローラクレーンの組み立て作業密着3日間徹底レポート

プロフェッショナル・オペレータが44個のパーツを安全かつ効率よく取り付けて3日間で完了!

工事現場や建設現場で活躍する巨大なクローラクレーン。
公道を自走できないクレーンはどうやって現場にやってくるのか。実は現場でパーツを組み立てる。

  • 組み立てられたコベルコクレーン SL4500J-35042m+42mラッフィングジブ仕様では大きく分けて24種類44個のパーツで構成される
  • 今回のセッティングの主要スペック
    項目 単位
    ブームの長さ 42m
    ジブの長さ 42m
    ロープ速度 主巻110~3m/min
    捕巻110~3m/min
    ブーム起状(2×20)~2m/min
    ジブ起状28~2m/min
    旋回速度 1.2rpm
    走行速度 1.0/0.6km/h
    作業時質量(基本姿勢) 324t
    接地圧(基本姿勢) 140kgf/㎠
    エンジン出力 435.2ps
    今回のセッティングのサイズ・質量、個数
    名称 サイズ(mm) 質量(kg) 個数
    上部本体(キャビン含む) 11790x2990x2540 30200 1
    カーボディ 6850x2990x1220 20000 1
    クローラフレーム 10520x1645x1750 30500 2
    クレーンマスト 11020x2470x1310 11800 1
    ベースカウンタウェイト 6400x2400x590 20000 1
    カウンタウェイト 1900x2450x480 10000 10
    ベースカーボディウェイト 2380x2640x1050 5690 2
    9m下部ブーム 9380x2970x2540 19600 1
    ブームバックストップ 7070xΦ370 1000 2
    1.2m上部ブーム 2780x2260x4030 4410 1
    9m中間ブーム 9140x2460x2400 2570 2
    7.8m中間テーバブーム 7940x2460x2390 2880 1
    6m中間デーパブーム 6160x2860x2460 1930 1
    9m下部ジブ 9210x2350x1720 2030 1
    6m中間ジブ 6130x1940x1805 940 1
    9m中間ジブ 9130x1940x1805 1340 2
    9m上部ジブ 9660x1940x1900 2700 1
    リアストラット 9230x1320x1020 2570 1
    フロントストラット 10430x1320x1040 1910 1
    補助シーブ 2460x1130x1010 630 1
    ジブバックストッブ 3420x450x300 130 2
    下部トランスリフタフロート Φ550x210 36 4
    ジブフック Φ450x1770 2000 1
    補助ジブフック 1810x900x700 900 1
    今回組み立てられた市原重機建設のSL4500J-350が作業する現場の施工会社は北野建設(株)東京本社。工事現場の規模は≒250m×100m H25mで、免震PC工法で行なわれる

クローラクレーン組み立て 1日目

SL4500J-350の組み立てには2台のクレーンが使用された。また、たくさんのトラックやトレーラがパーツを運んだSL4500J-350の組み立てには2台のクレーンが使用された。また、たくさんのトラックやトレーラがパーツを運んだ

SL4500Jのパーツはトレーラやトラックに搭載して続々と現場に搬入される。そして作業用のクレーンを使って組み立てがスタートする。なお組み立て手順書を用意しているが、実際の作業は現場で得た経験を生かして効率的に行なわれている。組み立ては7〜9人がかりで行なうが、安全第一で作業するのはいうまでもない。
最初は本体部分の組み立てからスタート。上部本体とカーボディを結合後、クローラを装着する。作業ではたびたび本体のエンジンをかけて自らの油圧を使っての作業も行なう場面もあった。
続いてカウンタウェイトを取り付け、さらにクレーンマストを取り付けて本体部分は完成。クレーンマストを立ち上げ後、下部ブームを組み付け、仮止めしたガイラインでブームを吊り、6m中間テーパブームを取り付けて初日は終了。

初日は本体の組み立てがメイン時には自らの油圧で組み立てていく

本体の組み立てがメイン時には自らの油圧で組み立て

カーボディの下部トランスリフタのシリンダ4本を作業位置に回転させ、ピンで固定する。続いてシリンダ下部にフロートを取り付け、下部トランスリフタの油圧ホースを接続。そして4箇所に玉掛けワイヤロープを取り付け、クレーンで吊り上げて地面に設置する。トランスリフタの支持ポイントは前後左右とも5.3m間隔となる。(写真はクローラ取り付け直後のトランスリフタの状態)

上部本体のマストフットピン(油圧)部吊り環と本体後部吊り環に玉掛けし、クレーンで吊り上げてカーボディ上まで移動させる。それぞれの芯出しをして、位置決め用の合いマークとノックピン5カ所を合わせる。この時はまだ上部本体は完全に降ろさない(写真は結合後)。この時、カーボディに対して上部本体はどの角度でも結合可能なのがSLの売りだ。

上部本体とカーボディを油圧源取出ホースとカーボディ作動用電源ケーブルで接続する(写真は結合後)。これによって上部本体の油圧を利用してカーボディを操作することが可能となる。この時はまだキャブは輸送状態となっているので、外部からリモコンで上部本体に搭載されているエンジンを始動させる。その後カーボディと上部本体の隙 間がなくなるまで上部本体を下げる

カーボディの結合リング操作スイッチで、上下結合リングを張り出させる。結合リング張出インジケータの赤ラインが見えていることを確認したのち、ボルトを締め込む。ストッパインジケータが出ていることを確認後、ロックナットで固定

ブロックリングが結合リングに当たるまでボルトを締め込み、ロックナットで固定。その後リモコンでエンジンを停止させ、油圧源取り出しホースとカーボディ作動用電源ケーブルを外す

クローラ取付

スイベルジョイントへの油圧ホースと、スリップリングの配線を接続。それぞれの油圧ホースは色分けしているため、色を合わせて接続。続いてスイベル回り止めロッドを立ち上げてスイベルジョイントの回り止めをしたのち、ボルトでロッド位置を固定。

リモコンでエンジンを始動させ、続いてカーボディをトランスリフタで800mmジャッキアップさせる。続いて上部本体を旋回させてクローラ取り付けに備える。なお、この時点ではまだキャブを輸送状態のままにしておかないとクローラを吊るワイヤと干渉してしまうので注意が必要だ

カーボディとクローラの上部かみ合い部と結合ピン穴にあらかじめグリースを塗布して準備を行なう

クローラに格納されている吊りブラケットをセットして玉掛け。そしてクレーンで吊り上げて移動させ、カーボディに取り付ける。

リモコンでクローラ結合ピンを挿入したあと、上部固定ピンを挿入。それぞれに抜け止めピンを取り付ける

クローラは左右に2つあるので、同じ作業を2度繰り返す

クローラ左右のクローラを取り付けたらトランスリフタをリモコンで格納後、エンジンを停止。キャブを回転させて作業位置に固定。さらにクローラのステップ位置を作業姿勢に変更する

走行用油圧ホースを接続。

カーボディの前後にベースカーボディウェイトとカーボディウェイトを寄り付ける。そのために上部本体を90度旋回させる。ベースカーボディウェイトは取り付けピンで固定する。その後はしごを設置するほか、トランスリフタのフロートもカーボディウェイトに取り付ける

ベースカウンタウェイトを上部本体後部に取り付ける。固定はピンで行なう。ちなみにベースの重量は20t

ベースカウンタウェイト上の左右にカウンタウェイトを積んでいく。バランスを取るために左右交互に積み上げていく。カウンタウェイトは1個10tだ。なお、高所での作業は安全帯を使用して命綱のフックを支持物に取り付ける

クレーンマストを搬入する。クレーンマストには、本来上部本体に搭載されるブーム起伏ウィンチが搭載されているが、これは輸送時の重量的理由からだ。搭載前にクレーンマストのキーパープレートを取り外し、ピン穴を清掃してグリースを塗布する

カウンタウェイトを右3個、左2個積載したところで、一旦積載をストップしてクレーンマスト搭載に移る。これは作業効率を考えた現場の知恵だ

エンジンを始動させて、運転室内ブームフットピン操作スイッチをONにし、作業中は降しゃ断レバーをロック位置にする

上部本体のマストフットピン(油圧)を引き抜く。続いて手動で起伏ウインチ本体固定用ピン、下部スプレッダ取り付けピンの順に引き抜く

マストフットピンは操作レバーを使用して油圧で挿入後、キーパープレートで抜け止めをする。その後、運転室のブームフットピン操作スイッチをOFFにする

マスト後端を上部本体に降ろし、下部スプレッダを結合ピンで結合する。そのためにシリンダ固定ブラケットを外側フックにセットし、電動シリンダをセット。電動シリンダに結合させた結合ピンを挿入する

輸送時はクレーンマストに固定されている起伏ウインチを専用吊り具で吊り上げ、上部本 体の固定位置に移動させる。移動後起伏ウインチ油圧ホースを接続する

下部スプレッダ中央にあるクレーンマスト安全装置(荷重計)とマスト角度計のケーブルを接続したあと、クレーンマストを起立させる

輸送姿勢だったバックストップのサポート位置決めピンを抜き、バックストップを起こす。作業位置まで起こしたら、サポート位置決めピンを挿入して固定。下部ブームを吊り上げて本体上部に取り付ける。その際エンジンを始動して回転数を1000rpmに固定。ブームフットピン操作スイッチをONにしておく

ブーム取り付け後、レバーで油圧式のブームフットピンシリンダを操作してブームフットピンを挿入する。挿入後ロックピンを入れて抜け止めをし、必要に応じて下部ブームと本体の隙間にシムを挿入する。その後、下部ブームを地面に降ろす

下部ブームには主巻ウインチ、補巻ウインチ、起伏ウインチがあるため、それらを操作する油圧ホースを接続する

運転席外左下の中継ボックスに下部ブームからの安全装置用ケーブルを接続する

カウンタウェイトの積載を再開し、最終的に左右6個ずつ積載する

最上部のカウンタウェイトとベースカウンタウェイトを2本の鎖で結んで固定し、カウンタウェイトが落下しないようにロック

メインブームの組み立てに備え、クレーンマストから垂れ下がっているガイラインを下部ブームのリンクに接続する

クレーンマストを立ち上げて、下部ブームを少し持ち上げる。今回のメインブーム長は42m。9mある下部ブームに、6m、9m、9m、7.8mの中間ブームと1.2mのラッフィング上部ブームで構成される

下部ブームには必ず6mテーパ中間ブームを取り付けることになっている。まず上側の接続ピン穴を合わせてツバ付きピンを挿入し、抜け止めピンで固定。続いて下側を接続し、上部同様にツバ付きピンを挿入して固定。なお、あらかじめ作業用の支柱とロープがセットされている

6mテーパ中間ブームを取り付けたところで1日目が終了

クローラクレーン組み立て 2日目

2日目はメインブームの組み立てから始まる。ブームやジブはその長さや用途によって組み付けるパーツの種類、数は異なる。今回はメインブーム長42m、ラッフィングジブ長42m の仕様。ブームは9m下部ブーム、6m中間テーパブーム、9m中間ブーム2個、7・8m中間テーパブーム、そして1・2mラッフィング上部ブームで構成される。各ブームには作業用の足場や手すりが備えられ、安全に組み立て作業を行なえるようになっている。
メインブームが組み上がるとストラットを取り付け、各ラインや配線を接続。起伏2ウインチからのワイヤロープを両ストラットに通して固定後、ストラットを立ち上げる。また主巻と補巻のワイヤロープも引き出しておく。
続いてジブの組み立てを始めるが、9m下部ジブと、9m中間ジブ、2個の9m中間ジブを組んだところで終了。

メインブームとラッフィングジブの組み立て。ケーブルや配線も行なう

インブームとラッフィングジブの組み立て。ケーブルや配線も行なう

2日目は9m中間ブームの取り付けから始まる。まずは赤い中間ブームを接続

メインブームには2組6本のガイラインが張られるが、その準備を行なう。これは下部ブームからリアストラットに張る2本のガイラインを接続しているところ

クレーンマストからラッフィング上部ブームを繋ぐ4本のガイラインの中間に接続するリンクを、6mテーパ中間ブーム上に搭載

ガイラインをブーム上に搭載し、リンクの上側に接続する

2つ目の9m中間ブームを取り付ける

7.8mテーパ中間ブームを取り付ける

ラッフィング上部ブームの取り付け。ラッフィングジブ仕様の場合、ラッフィング上部ブームはストラットやジブを取り付けるベースとなる

メインブームを地面に降ろし、ストラットやジブを取り付ける準備をすると共に、油圧ホースや安全装置用ケーブルを接続する

ラッフィング上部ブーム左右のリンクにガイラインを2本ずつ接続

左右2本ずつのガイラインは中間のリンクを介してクレーンマストと連結される。中央の2本はリアストラットと下部ブームを連結するガイライン

下部ブームのリンクに取り付けられていたガイラインを取り外す

ラッフィング上部ブームに繋いだガイラインに、外したガイラインを連結。これで下部ブームとラッフィング上部ブームがガイラインで結ばれた

クレーンマストを引き起こしてガイラインを張った状態ができあがる

ストラットを搬入する。輸送状態ではフロントストラット上にリアストラットが積載された一体型になっている

フロントストラットをラッフィング上部ブームに取り付け、ピンで固定する

リアストラットを持ち上げて、ラッフィング上部をブームに取り付ける。この時、作業用にフロントストラット上の受け台を立ち上げておく

リアストラットを取り付けあと、受け台上に降ろす。
さらにリアストラットのガイラインと下部ブームのガイラインを連結

7.8mテーパーブームに格納されているアイドラシープを作業位置にセット。なおラッフィングジブ仕様でない場合は使用しないため、格納したままとなる

フロント、リアストラットのシーブ間に適切にリービング用ロープを通し、先端を起伏2ウインチのロープに連結

起伏第2ウインチのワイヤロープの先端をリアストラットのロープソケットに固定し、補助クレーンでリアストラットを持ち上げる。フロントストラットの受け台も格納

主巻ウインチと補巻ウインチからもワイヤロープを引き出し、フロントストラットのシーブに通す

補助クレーンでリアストラットのスリングロープを吊り上げ、リアストラットを引き起こす。この時、フロントストラットが上がらないように起伏ロープを繰り出しながら行なう

フロントストラットも補助クレーンで吊り上げながら起伏ロープを巻き上げ、ロープの張力がなくなれば自然とリアストラットは降下する。ガイドラインを接続できるくらい降下させガイドラインを接続する

ストラットバックストップの固定ピンを外し、ブームの長さに合わせてバックストップを延ばして上部ブームに接続する。その後、ストラットバックストップの油圧配管を接続する

メインブームとストラットが組み上がった

地上で9m下部ジブと6m中間ジブ1つ、9m中間ジブを2つ接続する

組み上がったらラッフィング上部ブームに接続

ジブを上部ブームに接続し、ピンで固定する

ジブを連結したら地面に降ろす。ここで2日目が終了

クローラクレーン組み立て 3日目

いよいよ組み立て最終日。まずブームからジブへの配線の準備を進め、9m上部ジブを組み付ける。上部ジブ組み付け後、ガイラインの連結や主巻、補巻ケーブルの引き通しなどを行なう。上部ジブは主巻や補巻のフックが取り付けられるほか、監視用カメラなども設置される。また背が非常に高いので、航空機へ注意を喚起する航空障害灯も備えられている。今回の現場はスペース的に余裕があったため、ジブも延ばした状態で組み立てを行なったが、スペースが狭い場合はジブを抱き込んだ状態で組み立てることもあるという。すべての組み立てが完了するとブームをゆっくりと引き上げ、最後にフックを取り付ける。そしてジブを天高く引き上げて、クローラクレーンラッフィングジブ仕様が完成。これからこの現場で大活躍することになる。

ジブを組み立てて、フックを付ければいよいよ完成。これから現場で活躍開始

3日目はブームからジブへの配線などを準備

ジブのガイラインもすべて接続して配置する

ジブバックストップを上部ブームに取り付ける。これはジブの反転を防止するためのもので、上部ブームに固定する

フロントストラットにジブガイラインを接続

9m上部ジブをクレーンで吊り上げて接続する

ジブの配線などを行なう

吊り荷監視カメラをセット。このカメラで吊り荷の様子を確認することができる

補巻ロープの過巻防止装置を取り付ける

主巻ロープのフック過巻防止装置

主巻ロープと補巻ロープを通す。補助シーブ横に付いている車輪は引き起こしをスムーズにしている

ブームの引き起こしを開始

ジブが地切りするところまでメインブームを引き起こす

主巻ロープを過巻防止装置のリングとジブフック、ボールフックにリービングする

ロープをしっかりと固定する

続いて補助ジブフックにも補巻ロープを通す

  • クローラクレーンの完成フックの取り付けが完了したらジブを立ち上げてクレーンの完成
  • 埼玉県三芳町にある市原重機建設は1972年創立のクレーンチャーター今回、取材したコベルコSL4500を所有し、自ら組み立てた株式会社市原重機建設埼玉県三芳町にある市原重機建設は1972年創立のクレーンチャーター。7 ~ 70tのラフテレーンクレーン、100 ~ 300tのオールテレーンクレーン、そして50 ~350tのクローラクレーンを所有して、クレーン作業に従事している